
いよいよ目前に迫った7.21『DREAM.5』。識者4名に青木VS宇野について語ってもらった。
東京大学大学院総合文化研究科教授 松原隆一郎 勝負のカギはやはり寝技。宇野の動き続けることで圧倒する寝技と、青木の奇想天外なアイデアに満ちた極めのどちらが強いのか、予想がつかない。それで別の見方として、打撃に注目したいと思います。この二人は、現在のMMAでは珍しいミドルの使い手という点が共通しています。宇野は、パンチを当てるために腹を効かせてガードを下げさせるというミドル。つかまれても投げられないよう回転するなど、逃げに自信があるからできる技です。青木は対照的に、自分がパンチを被弾しないことに重点を置いたミドル。つかまれて倒されても下からの攻撃やスイープにこれまた絶対の自信がある。パンチを当てたい宇野と、当てられたくない青木が、ともにミドルを軸にするというのはMMAにおける打撃の進化形です。それで宇野は案外、ミドルを棄ててローを効かせようとするかもしれない。そのあたりに興味があります。

評論家 矢野もののふ 結論から言へば、宇野の「KO或いは(打撃で与へたダメーヂを利した)絞めでの一本勝ち」といふのが、この競技を長く観て来た者としての希望的観測を含めた「予想」です。
基本的にはやはり「打撃対寝技」の構図で、スタンド状態が長引くほど宇野のチャンスは増すだらうが、青木が永田を二度テイクダウンしてゐる点、飛びついての引込みも狙へる点を考へると、立ち続けてゐるのは難しさう。一R十分間のうち、いつ頃どういふ形でグラウンド状態に入るかが勝負の分れ目だと思ふ。
注目してゐるのは、宇野が最近の試合同様、シューズを履いて戦ふのかどうかだ。レスリングだけ考へるなら勿論さうすべきだけれど、青木は足関節も相当に使へる筈であり、グラウンドでのリスクはその分増えることになる。
もう一つのポイントは、宇野が、グラウンド状態の相手への頭部膝蹴り、両者グラウンド状態での顔面蹴り等、過去に経験したことの無い有効技を巧く活かせるかどうかだらう。
気になるのは両者の体格差で、判定になつた場合もその点が意外に影を落すかも。「綜合挌闘技において判定は不可能かつ無意味」が持論の私は望まない結末だが、可能性としてはそれが一番高いやうな気もするなあ……。
ATAQUE もう長らく総合格闘技を観ているけど、あんな光景を目にしたのは初めてだった。エディ・アルバレスとヨアキム・ハンセンの試合後に会場を包み込んだ拍手の渦を思い出すと、いまだに鳥肌が立つ。その数分後、自然体でありながら、力強く勝ち上がった宇野薫。後日、紆余曲折を経て、ようやく準決勝で足並みが揃った青木真也は感情を爆発させた。
宇野薫のサブミッションでの敗戦は2000年のマーシオ・クロマド戦にさかのぼる。青木真也の極めを、宇野はいかにして“逃げ”るのか。技術的な攻防に想いをめぐらせるのは楽しい。33歳の宇野が、今の青木と同じ25歳だったとき、佐藤ルミナを相手に修斗ウェルター級のタイトルを防衛し、UFCへと闘いの場を求めた。
日々進化しているMMAの世界だけど、そう簡単に新しい者たちに譲るわけにはいかない。あれこれ考えていると、トーナメントの準決勝だということをうっかり忘れそうになるけど、勝ち上がった選手はもう一試合闘わなければならない。そして、我々にはもう一試合見ることができる幸せがある。会場で、地上波で、PPVで、極上の闘いを堪能できるときがくる。今、そこにあの感動を超える瞬間があることを強く願っている。
スポーツライター 布施鋼治 青木真也VS宇野薫のもうひとつの闘い−−それは一般大衆の心をいかに掴むかということだろう。決戦当日の中継は21時から。裏番組を調べてみると、よみうりテレビに強力なコンテンツが控えていた。阪神VS巨人である(関東地方での地上波での放送はなし)。
阪神VS巨人といえば、セリーグの天王山。野球ファンならば、観たい衝動にかられるカードだ。そうした野球ファンの心をいかにして格闘技に向けるか。それが宇野VS青木、いや今回のDREAM5に課せられた使命のような気がする。
幸い阪神VS巨人の放送時間は18時10分〜21時10分まで。つまりDREAM5の放送時間とは10分しかかぶっていない。しかし、ケーブルやスカパー!で視聴できる日テレG+では完全生放送する予定だ。9時以降も阪神VS巨人が白熱していたらちょっと怖い。9時前にゲームがさっさと終わっていたら、何の問題もないんだけどね。

